YAMAPが実践した、カオスなお客様対応から脱却するナレッジマネジメント
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

YAMAPが実践した、カオスなお客様対応から脱却するナレッジマネジメント

PRAZNAマガジン

株式会社PRAZNA(プラズナ)が、さまざまな企業のナレッジマネジメントやDXの取り組みを紹介するマガジン『ひとりの「知ってる」を、みんなの「知ってる」に』。第7回は、カスタマーサポートの業務改善に取り組んできた、株式会社ヤマップの事例を紹介します。

株式会社ヤマップは、電波が届かない場所でも現在地を確認できる登山地図アプリ「YAMAP」を提供しています。累計280万ダウンロードを突破し、利用者が増え続けているYAMAP。その大勢のユーザーを支えているのが、カスタマーサポートチームです。

同社のカスタマーサポートチームは、4名と少人数ながら、ITツールを導入することで無駄のないサポート環境を実現しています。いまの体制を整えるまでの経緯、カスタマーサポートの業務改善で取り組んだことについて、カスタマーコミュニケーション担当の内田ゆうさんと矢島夕紀子さん、プロダクトマネージャーの中島仁史さんにお話を伺いました。

画像1

(左から)矢島夕紀子さん、中島仁史さん、内田ゆうさん

システム化によりカオスなお客様対応から脱却

――ヤマップでは、ユーザー向けに充実したFAQページを設置したり、お問い合わせ掲示板で直接ユーザーの相談に乗ったりするなど、お客様対応を丁寧かつ迅速に行っていますね。具体的に、いまどのような体制でカスタマーサポートチームを運用しているのでしょうか。

画像2

チームメンバーは4名で、うち3名がお客様対応をしています。お客様のサポート窓口は、掲示板、お問い合わせフォーム、ご意見ご要望フォームの3つ。それぞれに投稿された質問には、ユーザーさんの登録情報やYAMAPでの活動履歴などと照らし合わせて、一人ひとりに合った回答を行っています。不具合などの問い合わせに対しては、開発チームと常日頃から密に連携をとっており、原則当日中に解決策の方針を固めて、対応が終わり次第ユーザーさんにご報告をします。アプリの使い方や仕様の問い合わせについては、社内にナレッジをまとめた資料を用意し、その資料を見れば誰でも同じ品質で答えられるようにしています。

――ナレッジはどのような形でまとめていますか?

画像2

社内向けのナレッジ共有はKibela、回答の定型文はNotion、問い合わせ内容の一元管理はZendesk、といったようにいくつかのツールを使い分けています。

――ITツールをうまく活用して、お客様対応のナレッジを管理しているのですね。そのようなナレッジマネジメントは、会社全体で行われているのでしょうか。

画像2

そうですね。目的に応じた各ツールの使い分けは全社的に行っています。基本的に個人情報以外はフルオープンの姿勢が浸透していますね。その上で、それぞれの進捗状況や成果を共有し、称え合う「全体MTG」を隔週で開催していて、全メンバーがオンラインで集っています。


――今のような体制をどのように作り上げたのでしょうか。

画像2

以前は問い合わせがあるとメールが届き、代表の春山や開発チームなど一部のメンバーが確認して都度対応していたんです。でも、全員が同じアカウントでメールフォルダを開くから、既読になったまま誰も対応していないものが発生していて、とてもカオスな状況でした。いつかはシステム化をしないといけないと課題感があったんですけど、開発メンバーのリソースをそこに割く余力がなく、しばらくはそのままの体制を続けていました。そして、2年ほど前にエンジニアの中島(現在はプロダクトマネージャー)が入社して、システム面の改善に取り掛かってくれたんです。

画像6

ヤマップは社員が早く帰る文化があり、朝の8時には出社をして、夕方5時にはみんな退社するような環境でした。ところが内田だけは、お客様対応でいつも残っていた。それを改善できないかと考え、まずは、掲示板というパブリックなところにくる問い合わせは、Slackで全社員に通知が届くようにしました。そうすることで、誰もが早い段階でキャッチアップして、即座に回答できるようになった。そのあとも、問い合わせ内容を集約できる仕組みを作ったり、回答の定型文を検索できるようにしたりと業務改善を行いました。

――システムを導入したことで、どのように業務は効率化されましたか。

画像2

一例ですが、問い合わせ内容のキーワードから回答の定型文を自動検索できるようにしました。また、そのユーザーさんの使用状況や利用期間などに合わせて適切な回答の仕方を判断する、といったことも可能になり回答スピードが上がっています。当社が実施した満足度調査でも、回答のスピードに喜んでもらえる声が多いです。やはり問題をすぐに解決することがユーザーさんの不安を解消することにつながっていると感じますね。

――そのほかに、業務改善による成果はありましたか?

画像8

MAUが前年比で1.5倍に増えているのですが、それに対して問い合わせは昨年とほぼ同数、月によっては少ない件数でおさえられています。力を入れている点として、1つ目は「ヘルプセンター」(FAQページ)を充実させること。問い合わせが増えてきた項目を掲載することで、お客様が問題を自己解決できるように促しています。2つ目は、UIの定期的な見直しです。問い合わせが多い項目は「そもそもUIに問題があるかも」と会議で問題提起を行い、根本的な解決を図っています。そういった取り組みが問い合わせ件数の削減に結びついているように感じますね。


遭難事故を減らすためにヤマップが始めた取り組み

――ユーザーとのやり取りや要望がプロダクトに反映されたという例はありますか。

画像2

さまざまな例がありますが、特に印象的なのは「みまもり機能」の実装ですね。「知り合いが山で遭難してしまった。YAMAPに情報はありませんか」とユーザーから問い合わせがきているのを開発メンバーが見て、何かサポートできる機能を生み出せないかと考えたのがきっかけです。YAMAP利用時の位置情報を、遭難者の家族や友人、救助者である警察にも共有できる仕組みを作りました。

画像10

ヤマップでは、ユーザーに万が一の事態が起きた際にサポートできる環境を整えている(写真提供:株式会社ヤマップ)

――2019年には、遭難者の情報開示依頼を受け付ける「遭難者情報提供フォーム」を実装していますよね。このサービスはどのような経緯で生まれたのでしょう。

画像2

「みまもり機能」を実装したけど、まだまだ使ってもらえる人が少ないという状況で、2019年9月に19歳の女性が遭難で亡くなる事故がありました。当社にとってもショックな出来事で、もし「みまもり機能」がもっと普及していたら防げたのではないか、という意見が社内であがりました。YAMAPで集めた情報を捜索に直結できる仕組みを作り、同時に「みまもり機能」の周知もはかっていこうという目的をもって「遭難者情報提供フォーム」を設置しました。

――実際に「みまもり機能」の利用数は増えているのでしょうか?

画像2

警察やご家族からの問い合わせが、以前だったら月に1件あるかどうか、という程度でしたが、今だと多いときは10件ほどくるようになりました。また、「遭難者情報提供フォーム」に投稿された情報を捜索に直結できるような仕組みを作り、ヤマップを通さずに、ご家族と警察で位置情報を使って捜索をしているという例もあります。以前よりは普及した実感はありますが、もっと浸透させていくことが目標なので、まだまだこれからですね。

お客様は「一緒にプロダクトを作る仲間」

――ヤマップでは、お客様対応をしていく上で大切にしているこだわりや哲学などはありますか。

画像2

これは代表の春山が創業当時から言っていることなのですが、カスタマーサポートは事業の重要なポジションだと全社的にも捉えられています。ユーザーさんとの対話によってサービスは成長しプロダクトが開発されてきた、という意識があるからです。よく「お客様は神様です」といった言葉が使われますが、当社では「お客様は一緒にプロダクトを作る仲間」だと考えています。

画像8

ユーザーさんとフラットな関係性だという意識を全社員が持っているので、決してマニュアル通りの対応で済ませず、各人が思う最適な対応を行っています。ユーザーさんがパソコンに不慣れなら専用のマニュアルを作ったり、要望に応えられない場合でもそのユーザーさんのサービス愛に対して感謝の気持ちを込めてステッカーを送ったり……カスタマーサポートに限らず、どの社員も常にユーザーさんに最善を尽くす意識で対応をしています。

――「お客様は一緒にプロダクトを作る仲間」という考えが、全社的に浸透しているのは何故でしょう。

画像2

そもそも社員がYAMAPというサービスにとても愛情を持っています。それがユーザーさんへの対応や説得力にも表れているような気がします。あとは、代表の春山が常に「ユーザーさんの声がサービスのために一番大事だ」と言っていて、週一で開かれる社内会議でもユーザーさんの声を集計して真剣に議論を行い解決にあたるというのが習慣化されています。そうした積み重ねによって、自然と社員が自分ごと化して考えられているのだと思います。

――すでに充実したカスタマーサポートが実現できていると思いますが、その一方で課題や未来への展望などもあれば最後に伺いたいです。

画像2

シニア層のユーザーさんが多いのですが、その中にはYAMAPの機能をまだよく理解できないまま利用している方もたくさんいらっしゃいます。それによって救助できなかったという事態を防ぐために、機能の周知をもっと行わないといけないと思っています。山岳会でリアルな講習をしていますが、対象人数が限られているので、広く浸透させるのは難しい。このコロナ禍でシニア層の人達のオンラインへのハードルが下がっているので、そこも活用しながらいろんな世代の人にYAMAPの使い方や魅力について広めていきたいですね。


取材を振り返って

山登りをする人にとっては定番で、私も愛用している登山アプリYAMAP。たくさんユーザーがいる分、日々たくさんの問い合わせがあると思いますが、カスタマーサポートはたったの3人ということに驚きましたし、最適な形でナレッジマネジメントが行われている証拠でもあると感じました。「お客様は一緒にプロダクトを作る仲間」という考えを社内のみなさんが持っているというお話でしたが、お客さまが自己解決できるようにFAQページを改善したり、問い合わせが多い項目をUIで改善したりなど、根本的な解決を図っているといったところからも、その文化がきちんと根付いていることが感じられます。1ユーザーとしてもアプリへの信頼がますます高まった取材になりました。(PRAZNA 佐藤さやか)


取材・文:園田もなか
編集:ノオト


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!
オススメありがとうございます!

最後まで読んでいただきありがとうございます!このメディアは株式会社PRAZNA(プラズナ)が運営しています。会社情報や提供サービス、採用についてはコーポレートサイトで発信しています。

ありがとうございます!ぜひフォローもしてください!
PRAZNAマガジン
ナレッジでビジネスの最短ルートを目指すPRAZNA(プラズナ)のメディア。ナレッジに向き合う人や想いにフォーカスして、チーム作りや組織経営のヒントになる情報を発信します。