米にこだわるプレナス、スマート農業への挑戦。ナレッジを活用し、農業課題の解決へ
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米にこだわるプレナス、スマート農業への挑戦。ナレッジを活用し、農業課題の解決へ

株式会社PRAZNA(プラズナ)が、さまざまな企業のナレッジマネジメントやDXの取り組みを紹介するマガジン『ひとりの「知ってる」を、みんなの「知ってる」に 』。第4回は、持ち帰り弁当店「Hotto Motto(ほっともっと)」や定食レストラン「やよい軒」を、国内外で3000店舗以上展開している株式会社プレナスが着手した「スマート農業」の事例を紹介します。

国内チェーン約2700店舗だけで年間4万トンのお米を消費しているプレナスですが、日本全国で見ると米の消費量は年々減少傾向にあります。昭和37年度(1962年)には1人当たり118kgだった消費量は、平成30年度(2018年)には53.5kgにまで半減。消費量が減ることで米の作付け量も減少し、米作りに携わる農家も減り続けています。

これらの課題に危機感を抱いたプレナスでは、自社で稲作を行うプロジェクトを開始。2021年5月からは、最新のITツールを活用したスマート農業に取り組み始めました。米づくり事業推進室の室長を務める佐々木哲也さんに、稲作のDX化とナレッジマネジメントについて伺います。

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株式会社プレナス 米づくり事業推進室長
佐々木哲也さん

2002年に株式会社プレナスへ入社後、15年間Hotto Motto(ほっともっと)の営業に携わったのち、2018年に出店を開始した「Hotto Motto Grill(ほっともっとグリル)」の立ち上げに参加。2021年2月より現職。事業規模拡大のための農地確保やノウハウ構築に当たる。

日本の農業課題を解決することで、事業の課題も解決できる。自社稲作プロジェクト発足へ

――貴社は、かなり米に対してこだわりをお持ちだそうですね。

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Hotto Mottoのロゴマークをよく見ると、米がシンボルになっているのをご存知でしたか? 実はそこまでしてしまうほど、当社は米にこだわりがあるんです。国内店舗で使用するのはすべて国産米。新鮮な玄米を仕入れ、全国に4カ所ある精米工場で精米から行いますし、炊飯方法も厳格にマニュアル化されています。

一方、海外店舗は国によって事情が異なっています。日本の米を輸出して使用しているところもあれば、玄米を輸出して現地で精米したり、現地で生産されている日本の品種を使ったりと、国によって品質もコストも商流もバラバラなのが現状です。

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入社して約20年間営業一筋だったので、
農業に関しては素人だという佐々木さん

――そんな中、2021年2月より埼玉県加須市に農地を借り受け、「プレナス加須ファーム」を展開されています。自社による稲作を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

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米文化継承事業を推進するうちに、日本の米文化や農業が抱える課題が見えてきたのがきっかけです。日本人1人あたりの米消費量は、最盛期と見られる50~60年前と比較して半減しています。消費量が減ると、農家は米から他の作物への転作を促され、どんどん米の生産量が減少し、消費者への安定供給が困難になります。加えて、農業従事者の高齢化も切実な問題です。年間4万トンの米を使用している当社としては、このまま農地面積や農業に携わる人の数が減っていくと、将来的には消費者の方においしいごはんが届けられなくなってしまうのではないか、という危機感をおぼえたのです。

――日本全体の農業の課題が、貴社の事業にも直接影響してしまうのですね。

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当然そうなりますね。そこで、米の販路において最上流である稲作に挑戦してみよう、という計画が持ち上がりました。当社にはすでに、精米加工や炊飯に関するノウハウや設備がありますので、もし稲作に成功すれば、将来的に米を作るところから店舗で提供するところまで、一気通貫した事業を展開できるかもしれない。そして、海外にも自社で作ったおいしい米を安価で輸出し、提供できるようになるかもしれない。長い目でみるとそんな狙いがありました。

短期間で生産性を向上させるべく、ドローンを活用したスマート農業を実践

――5月にはドローンによる田植えを行うなど、スマート農業を開始されました。最初に稲作プロジェクトが発足したのは2020年2月だそうですが、当初から、農業のDXに関しては視野に入れていたのでしょうか。

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プロジェクト立ち上げの時点では、「自社で稲作に挑戦する」これだけしか決まっていませんでした。まずひとりの社員が先行して加須の農家へ修行に行き、農作業のナレッジを教えてもらいつつ、自分たちで米を作るならどんな方法がベストなのかを探っていきました。

本来農業は、長い年月をかけて経験とノウハウを培っていくものです。ですが、本プロジェクトに携わるメンバーは、私を含め、誰にも農作業の経験がありませんでした。「素人が少しでもスムーズに、短期間で米を作るにはどうすればいいか?」そう検証した結果、スマート農業を取り入れてみることにしたんです。そこから1年かけて構想を練り、2021年2月からプロジェクトを本格開始しました。現在3人の社員が埼玉県内に移住し、本格的に農業に取り組んでいます。

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米づくりに従事している3名の社員。
毎日農作業に従事している(写真提供:株式会社プレナス)

――近年では農水省も「農業DX構想」を提唱し、スマート農業の技術も発展していると聞きます。貴社では、具体的にどういった技術を導入されたのでしょうか。

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まずは、先ほどお話しいただいたドローンの活用ですね。従来の稲作は、まずビニルハウス内で苗を育て、田植え機で田んぼに植えていくのが基本のやり方でした。しかしこの方法はものすごい時間と労力、コストがかかります。

この課題を解決するため、ドローンで空から直接田んぼに種をまく農法を試してみることにしました。この技術が開発されたのはここ3年ほどだそうで、まだまだわからないこともありましたが、専門家の方とやりとりをしつつ挑戦しました。種をまいてから2カ月がたちましたが、無事に育っているのでとりあえず安堵しています。

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ドローンによる効率的な田植えを確立することで、
将来的なコストや労力のカットを狙う(写真提供:株式会社プレナス)

また、田植え後にもドローンを活用し、稲の育ち具合や雑草の生え具合を空撮と画像センシングにより確認できるシステムも導入しています。素人目では稲なのか雑草なのか見分けがつかないものも、解析により可視化できています。

――ドローンによる田植えのほかに、導入されたDX施策はありますか?

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田んぼの水管理をスムーズに行うために水位センサーを設置し、水量をスマートフォンでいつでも確認できるようにしました。水の給水を遠隔で行える装置も導入しているため、田んぼに足を運ばずに済んでいます。また、営農管理システムで天候状況、肥料や農薬など農作業内容をクラウド上で管理し、一目で確認できるようにしました。今後は田んぼごとに米の収穫量や食味データを分析し、安定した収量を確保できるようにしたいと考えています。

――DX化による数字的なメリットについて、現段階ではどのように算出されていますか?

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1年目となる今年は、予測通りに稲が成長していくのかを検証しようと思っています。ドローンを使用した田植えで問題なく米が作れれば、従来型の稲作より3割ほどコストカットできるのではと試算しています。あくまでこれは、今後田んぼの規模を拡大したときの試算です。現状の2.5ヘクタールの面積では、まだまだコストカットにはつながりませんが(笑)。

――今後DX化で稲作のナレッジが蓄積された際には、どのように活かしていきたいとお考えでしょうか。

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当社は農業専門の会社ではないので、人事異動もありますし、新しいメンバーが途中から米作りに関わることもあり得ます。新たなメンバーが短期間で農業スキルを習得するためには、ナレッジの活用が不可欠だと考えています。

全国でチェーンを展開していることもあり、サービス品質を一律にするためのマニュアル作りに関しては、長年培ってきたノウハウがあります。この「マニュアル作りと農業」をどう融合させ、新たなナレッジとして社内で蓄積していくのかは今後の課題ですね。

培ったナレッジを自社以外にも共有し、農業界の課題解決の一助となりたい

――貴社が今後培っていくスマート農業のナレッジを、農業界へどのように提供していきたいと考えていますか?

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私たち農業初心者が農家の方から米作りについて多くを教わる一方で、水位センサーを設置したりドローンを飛ばしたりしている様子を見て、多くの近隣農家の方が興味を持ってくださいました。その意味では、双方向で情報交換をさせていただけたのではないかと感じています。

また、スマート農業を推進することで、若い人が農業に参入するハードルを下げることにも貢献できるとも考えています。もちろん営利活動なので、利益の追求が前提にある取り組みにはなりますが、自分たちの事業だけにナレッジを活用するのではなく、価値観を共有できる農家の方々にどんどん共有し、共に稲作に取り組んでいければと思っています。

――貴社のような外食産業、中食産業へのナレッジの共有や協業に関してはいかがでしょうか。

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当社と同規模の会社で、自社で米を作ってお客様に提供しているところはほとんどないのではないかと思います。私たちがこの取り組みに着手できたのも、生産から加工、売り先までを当社のみで完結できるサプライチェーンを時間をかけて整えてきたからです。ただ、海外で店舗展開している日本食チェーン店の中には、当社と同様に米の品質やコストを安定させられず苦労しているところもあるはずです。そういった企業に対しては、将来十分な米を収穫できるようになったら、ぜひ当社の良質な日本米を供給させていただきたいという展望は持っています。

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プレナス本社屋上の田んぼに植えられているのは、
プレナス加須ファームのメンバーが育てた稲
(写真提供:株式会社プレナス)

――米文化継承事業からスタートし、営利活動としてスマート農業を始められたプレナス。今後どのように社会に貢献していきたいと思われますか。

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まだ始まったばかりの取り組みですので大きなことは言えませんが、今後実験を重ね継続していく中で、より生産性の高い農法を追求していくつもりですので、その際には当社のナレッジを農業界全体に共有していきたいと考えています。プレナスが稲作の規模を拡大することで、農業人口の減少や放棄地の拡大といった日本における農業全体の課題解決の一助になればと願っています。


取材を振り返って

農業は、やってみたいと思っても、土地や機械を持っていない上、経験知も無いと、かなりハードルの高い職業だと思うので、ナレッジマネジメントが徹底されて、経験はなくても興味ある人が気軽に始められるようになればいいなと思いました。私の実家は農家で、今は兄が後を継いで両親と一緒に働いています。過去40年以上農業に携わってきた両親ですが、どうやらそのコツやノウハウなどのナレッジはほとんど言語化されたことがなく、二人の頭の中にしかないようです。両親が健在なうちは、わからないことをその都度質問すれば何とかなりますが、もし急に頼れなくなるような事態が起こったら……。そう考えるとナレッジマネジメントは、家族経営をはじめとした小規模の組織の中でこそ備えておくべきものなのではないか、と感じます。さらにそこから農業のナレッジ共有が広がっていけば、興味はあっても経験がない若年層も、もっと気軽に農業に参入できるはず。そんな希望が持てるような取材でした。(PRAZNA佐藤さやか)


取材・文:卯岡若菜
編集:波多野友子/ノオト
撮影:波多野匠


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