現場のナレッジがアイデアを生む! くら寿司がユニークな自社システムを開発できる理由
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現場のナレッジがアイデアを生む! くら寿司がユニークな自社システムを開発できる理由

株式会社PRAZNA(プラズナ)が、さまざまな企業のナレッジマネジメントやDXの取り組みを紹介するマガジン『ひとりの「知ってる」を、みんなの「知ってる」に』。第1回は、抗菌寿司カバー「鮮度くん」や水流により食べたお皿を自動で洗い場まで運ぶ「水回収システム」など、独自のシステムによるサービスが印象的な「くら寿司株式会社」の事例を紹介します。

くら寿司のシステムの多くは、自社のテクノロジー開発部で生み出されており、その数は約30にものぼると言います。店舗の課題を本質的に解決するシステムを作るために、同社ではテクノロジー開発部に元店舗経験者(店長)が異動し、現場で培ったナレッジを共有・活用しているそうです。ユニークな自社システムの開発の裏側や、それらを生み出すテクノロジー開発部について、広報の黒見繭さんにお話を伺いました。

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くら寿司株式会社 広報宣伝IR本部 広報部
黒見繭さん

インターネットを利用した学習システム“イーラーニング”の開発などを手がける会社に新卒入社し、広報業務を経験。その後、もともと食べることが好きで、「四大添加物無添加」など食の安心・安全にこだわるくら寿司の姿勢に感銘を受け入社。TVや新聞、雑誌などさまざまなメディアを通したPR業務に携わる。

2016年から発足した「テクノロジー開発部」

――くら寿司さんはさまざまなシステムを積極的に取り入れている印象があります。それらのサービスをどのように導入・運用しているのでしょうか。

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くら寿司には「テクノロジー開発部」という部署があり、4つのセクションに分かれています。

(1)新たなシステムを開発する部門
(2)社内インフラやサーバーを管理する部門
(3)店舗内にシステムを導入して遠隔でサポートする部門
(4)「自動炙り機」など自社で運用している機械を管理する部門

システムの開発から導入、運用時のサポートまで、システム周りのことは全てテクノロジー開発部が管理していますね。

――テクノロジー開発部はいつ頃からある部署なのでしょうか。

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正式に「テクノロジー開発部」として立ち上がったのは、2016年からですね。それまでも営業の方と現場の方で「こういうものが必要だ」となれば社内で1から作り出そうとする文化がありました。ただ、いいアイデアがあっても技術的な実現が難しく、一部外注していましたが、固定観念にとらわれてしまい、より良いものが生まれないという課題がありました。そこからより本格的に自社開発へと舵を切ることにして、テクノロジー開発部が生まれました。

――さまざまなシステムを全て自社開発するのは、なかなか負担が大きいようにも思えます。なぜ外注ではなく自社開発という選択をしたのでしょうか。

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例えばレジのように、ほかの飲食店でも既に広く使われている機械や仕組みであれば、外注した方が早く完成します。ところが、くら寿司ではQRコードを用いて寿司の品質管理をする「時間制限管理システム」やお客様の消費皿数を予測し、レーンに流す皿数を最適化する「製造管理システム」などをはじめ、独自の特殊なシステムが多くあります。それを外注するとなると、どうしても時間やコストがかかってしまうんです。また、業界初の取り組みが多く、既存しないものを生み出す必要があるという理由もあります。

自社で開発すればそうした懸念がなくなりますし、自社の店舗で試験運用できるのでトライアンドエラーがしやすく、スピード感をもって運用までもっていくことができます。試行錯誤する中で得た知識やノウハウは社内に蓄積されるので、次のシステム開発に生かせるというメリットも。そういった側面から、自社開発に特化するようになりました。

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QRコードで廃棄までの時間を計測する「時間制限管理システム」。一定時間が経った寿司は、音と画面で自動で廃棄のタイミングを知らせてくれるので、常に新鮮な寿司がレーンに流れる(写真提供:くら寿司株式会社)

ユニークな発想が生まれるために必要なのは「現場の声」

――どうして数多くのユニークなシステムを生み出せるのでしょうか?

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現場の声を積極的に取り入れていることが大きいと思います。当社では人事本部や管理本部など各部署のマネージャーを、店舗勤務の経験がある社員から抜擢しているんです。テクノロジー開発部も同様で、くら寿司の店舗で店長など現場でのマネジメントを経験した方が異動して現マネージャーを務めています。店舗経験があれば「現場は今どういうことに困っているか」を想像しやすいですし、店舗とつながりがあることで現場の声を吸い上げやすくなります。そこで浮き彫りになった課題がさまざまなシステム開発のアイデアの種となっています。

例えば「水回収システム」は、店舗の女性客から「お皿を積み上げるのは恥ずかしい」という声があり、そこから生まれたシステムです。これも現場から直接相談があり、実現しました。現場から声がかかりやすいメリットは大きいと思っています。

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各テーブルに設置されている「水回収システム」。食べ終えた皿を投入すると枚数が自動計算され、テーブルの上に皿が残らない(写真提供:くら寿司株式会社)

――現場経験がある人のマネージャー起用は、以前からあった文化ですか?

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そうですね。創業者である社長が「店舗のことを知らないと運営もできない」という考え方を持っています。そのため、副社長や常務取締役もお店の運営を経験しています。

――会社の文化として深く根付いているんですね。ただ、店舗経験があったとしても、テクノロジー開発部という全く違う領域の部署に異動すれば、覚えることも多く大変なのでは。会社としてはどのようにフォローしているのでしょうか。

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もちろん最初は何の知識もない状態で入るので、緊張するという声は聞いています。ただ、開発部にはさまざまなメンバーがそろっています。別企業でシステム開発に携わり転職してきた人もいるので、システムの設計や最適化の方法などは彼らから学べる環境ができています。

また、マネージャーが出したアイデアをシステムに落とし込むにはどうすればいいのか、テクノロジー開発部内で定期的にミーティングを行い、個々のナレッジを共有しながら最善策を考えています。

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テクノロジー開発部のミーティング風景。それぞれの知識とノウハウを集結してアイデアを生み出す(写真提供:くら寿司株式会社)

――現場の声を取り入れることで、導入の失敗も少なくなりそうです。

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そうですね、最近だと、こんなことがありました。抗菌寿司カバー「鮮度くん」という自社独自の寿司カバーがあるのですが、これはもともと、お寿司の鮮度を保ったり、空気中の埃から守ったりするために開発されたものです。飲食店でノロウイルスによる食中毒などが問題となる中、当社も早急に対応すべきだと言う声を受けて2011年から導入しました。この導入については、お寿司の提供オペレーションの変更が必要で、設備が完成してからも、現場と一体になり半年以上かけて導入を進めました。

それが2021年、このコロナ禍において、その安全性に注目が集まり、さらに高く評価されるようになりました。当時は、より安心安全のために導入した技術ですが、今後、寿司カバーは回転ずしのスタンダードになるのではと考えています。

新しいアイデアは現場とのナレッジ共有で生まれる

――システムの自社開発に積極的に取り組んで良かったと感じる点はありますか。

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くら寿司は入店から退店まで全て自動化していて、コロナ禍では「非接触サービス」という形で、お客様に安心感を与えられていると感じています。

もともと非接触を推進していく「スマートくら寿司」という構想は、コロナ以前からあったものでした。当初は回転率をアップさせてお客様をお待たせしない、会計などを自動化して店舗スタッフを片付けに注力させるなどの目的で始めました。近年では、自社システムで厨房作業の一部を自動化することにより、入社1日目の社員が即戦力になることができています。くら寿司はチェーン店なので、どのお店に入っても美味しいお寿司が食べられるという、一定の品質を守ることもテクノロジーによって担保されています。

――お客さんにとっても店舗にとっても、利点が多いと感じられているんですね。

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そうですね。これまでは寿司の鮮度を判断することができる店長がレーンに流れるお寿司の状態をチェックし続けて、廃棄のタイミングを管理しないといけませんでした。その店長のナレッジを「時間制限管理システム」や「製造管理システム」に落とし込むことで、アルバイトスタッフだけで廃棄できるようになり、その分店長は店員の教育など他の業務に時間を充てることができています。

――業務の属人化を避け、従業員が自分の仕事により集中できるような環境ができている、と。そういった課題解決が実現しているのも、テクノロジー開発部が現場の声を取り入れてきた結果のように感じました。最後に今後の展望を教えていただけますか。

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具体的に最近取り組んでいることといえば、入店から退店までお客様と店員が接触しない「非接触サービス」を全店に導入することです。本来は2025年までに全店へ導入する予定でしたが、このコロナ禍でスケジュールを前倒しして動いています。また、自身のスマホからメニューを注文できる「スマホで注文」をはじめ、画面への非接触も進めています。

そして、当社はこういった自社システムの開発をし続けてきたことで、業務が効率化され、お客様に新しい価値を提供できるようになりました。そして、そんなシステムが開発できたのは、テクノロジー開発部と現場の間でナレッジを共有できたことが大きいと思っています。会社を成長させる新しいアイデアは、部署の垣根を超えた知識や経験、ノウハウの共有によって生み出されると思うので、今後もくら寿司は現場との連携を大切にしながら新たなシステム開発を進めていきたいと思っています。


取材を振り返って

組織内でナレッジマネジメントについて語る場合、同じ部門内でのナレッジ共有で終わらせてしまうことがほとんどです。しかし、くら寿司さんでは、部門横断的な、より高度なナレッジマネジメントが実践されていると感じました。店舗の現場で経験や実績を重ねてきた人材が、畑違いであることを問わず、開発部門で指揮を執ることによって、現場で本当に必要とされているシステムの自社開発にも成功しています。また、多くの企業で課題として挙げられる現場業務の属人化も解消し、1年目の社員でも即戦力になれる環境が整備されているというのは、くら寿司さんが果敢に取り組んできたナレッジマネジメントの賜物だと感じました!(PRAZNA鈴木洋佑)


取材・文:園田もなか
編集:水上歩美/ノオト


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