JR東日本が遅延情報やナレッジをスムーズに共有できるワケとは?
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JR東日本が遅延情報やナレッジをスムーズに共有できるワケとは?

株式会社PRAZNA(プラズナ)が、さまざまな企業のナレッジマネジメントやDXの取り組みを紹介するマガジン『ひとりの「知ってる」を、みんなの「知ってる」に』。第5回は、タブレット端末を活用して業務改善に取り組んできた、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の事例を紹介します。

JR東日本では、全社員にタブレット端末を配布。それぞれの職場の需要に合ったアプリを活用し、業務の一助として利用しています。なぜタブレット端末を導入しようと思ったのか、また大規模な導入により職場の環境はどのように変化したのか、同社の技術イノベーション推進本部 システムマネジメント部門の岡本直樹さん、寺内健人さん、石原翔太さんにお話を伺いました。

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(左から)石原翔太さん、岡本直樹さん、寺内健人さん

試験的に導入された「Joi-Tab」

――JR東日本さんでは、全社員に業務用のタブレット端末としてiPadを配布していることが有名ですよね。いつ頃から導入されたのでしょうか。

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導入は2014年からですね。駅係員や乗務員など現場で働く社員を中心に配り始めて、現在はオフィスに勤務する社員も含めて約56,500人に支給できている状態です。当社ではこのタブレットのことをJoi-Tab(ジョイ-タブ)と呼んでいます。


――今でこそデジタル化やDX化の推進が叫ばれていますが、それ以前から導入されていたんですねJoi-Tabを取り入れた経緯について教えてください。

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「この課題を解決したい」といった明確な目的があったわけではなく、タブレットが課題解決の火付け役になるのでは、という考えで試験的に数台導入をしたのが始まりです。弊社はさまざまな職種の社員で成り立っているのですが、それぞれの現場に課題が山積している状況でした。たとえば、当時の情報共有の手段は電話、無線、ホワイトボードしかなく、さらに社内システムへアクセスするには会社にあるパソコンを操作しなくてはいけなかった。そのため、駅社員は事務室以外の広い駅構内での業務が多い一方で、トラブルが起きたときは解決するツールにアクセスするためにわざわざ駅の事務室に戻らないといけない環境でした。問題解決の即時性が劣っていたんですね。

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加えて、オフィス部門と現場で働く人たちをつなげるデバイスがなかったことで、現場で何かアイデアが生まれたとしても、それを吸い上げる術がありませんでした。社員の声に耳を傾けて、創意工夫を助けるという意味でもタブレットは役に立つのではないか、と。実際に、いま各部門で必要に応じたアプリが開発され、それが全社的に広がって、現場の業務改革につながっていると感じています。

タブレット1台で済むことで業務が効率化

――現在は、職種によって様々なアプリが活用されていると思うのですが、導入された当初は主にどのような使い方をしていたのでしょうか。

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最初は、コインロッカーの空き状況とダイヤの把握の2つですね。Joi-Tabを導入する前は、お客様に「どこのコインロッカーが空いているか」と聞かれても答えられなかったのですが、タブレット端末の専用アプリから一目でわかるようになりました。また、次の電車がどれくらい遅れているかなども駅の事務室に確認したり、ホームの掲示板を見に行ったりしないとわからなかったのですが、それもタブレットでわかるようになったので、問い合わせにその場で答えられるようになりました。この2つは特に重宝されていましたね。

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事務室に確認しなくても、新幹線や在来線の運行状況をタブレットで即座に確認できる

――最近だと、人身事故が起きたときに駅のアナウンスで素早く情報を伝えてくれて乗客としては安心するのですが、これもJoi-Tabで共有されているんですか。

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そうですね。私はちょうど1年前まで首都圏で駅員をしていたのですが、入社した当初からJoi-Tabで事故の状況や遅延情報を共有していました。それ以前は、無線でやり取りをするしかなく、事故が発生した現場に問い合わせが殺到して、いつごろ運転が再開するのか、今どのような状況なのか、という情報をスムーズに共有できなかったと聞きました。Joi-Tabが普及してからは、状況が常にリアルタイムでアップデートされていくので、お客様の問い合わせにも迅速に対応することができます。

――Joi-Tab導入当初の現場の反応はいかがでしたか?

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当時の担当者からの話では、駅員の方々からとても感謝をされたと聞いています。導入される前は、駅員さんはいわゆる“七つ道具”(時刻表や、駅近隣の設備情報など)を、お客様から問い合わせがきたときに備えて持ち歩かなければいけなかった。それがタブレット端末一台に集約され、案内のスピードも早まり、誤った回答も減った。もちろん紛失などのトラブルもないわけではないですが、基本的にはポジティブに受け入れられたと感じています。


コロナ禍で感じたJoi-Tab導入の価値

――Joi-Tabを導入して7年ほど経ちますが、導入したことで現場にどのような変化があったでしょうか。

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変化は特にこのコロナ禍で感じています。当初は業務改善を目的に使っていましたが、2019年7月頃から本格的に情報共有ツールやウェブ会議ツールを導入したことで、なかなか人が集まれない今の時期でも、散らばっている社員がオンラインで集まることができています。

我々はIT企業ではないので、画面を通して人と会話をするような文化はなく、社員も慣れていませんでした。ただ早めにタブレット端末を導入していたことで、普段からパソコンを使うオフィス勤務の社員だけではなく、現場で働く社員とも円滑にオンラインコミュニケーションを行うことができています。

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たしかにコロナ禍での対応には大きく効果がありましたね。もし全社員がタブレットを持っていなかったら、端末を配布して、一からアプリを作って、コミュニケーションツールを入れて……と多くのプロセスを踏まなければいけなかった。弊社はすでに最低限のプラットフォームができていたので、早いうちからタブレットを導入していたことの価値を感じました。

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社員がタブレット端末の操作に慣れているため、テレワークへの移行も順調だった

――オンラインではどのようなコミュニケーションが行われているのでしょうか。

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飛躍的に増えたのはウェブ会議ですね。あとは、コロナ禍以前から部門ごとに勉強会が頻繁に開催されていて、これまではリアルで社内の会議室でやっていましたが、現在はオンライン上で滞りなく行うことができています。

――Joi-Tabを早くから導入していたことで、コミュニケーションのオンライン化がスムーズにできたんですね。

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そうですね。移動時間が削減された分、現場では特に以前よりも多く勉強会を開催できています。勉強会以外でも、チャットや資料共有をオンラインで気軽にできる環境を整えたことで、社員同士のコミュニケーションが活発になり、細かい悩みや質問なども社員間で解決できるようになっています。今ではもうJoi-Tabがないと業務が成り立たないくらいには浸透していますね。


まだまだ可能性を秘めているJoi-Tab

――Joi-Tabを導入する以前から勉強会など社員同士がナレッジを共有していたということですが、そういう文化の必要性は以前から感じていたのでしょうか。

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はい。当社はさまざまな業種の社員から成り立っていて、それぞれに異なるナレッジがあります。ただ、その知識を教えられるベテランの社員は多くが60歳間近で、あと2年ほどで退職してしまうという現実があります。そのときに問題になるのが人材育成や技術継承です。今までは勉強会の開催に加えて、口頭で伝えてメモをとり、それをマニュアル化する、といった方法などで進めてきました。しかし、なかなかマニュアルだけでは伝わりきらない部分も多いため、経験値をどのように明確化して伝えていくかが課題となっていました。

最近は、その解決策として動画共有サービスをうまく活用できないか考えています。人材育成や技術継承に必要なノウハウを動画で撮影して勉強会で使うとか、それをアーカイブとして活用していくなどできればな、と。

――Joi-Tabはまだまだ可能性を秘めているんですね。

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そうですね。特に鉄道設備や車両のメンテナンスを行うベテラン社員の方は故障前の状態が音でわかるとか、見てわかるとか、そういう職人肌の方が多くいらっしゃいます。そういった個人の経験から身についたスキルをどう見える化、数値化して受け継いでいけるか、という点は現在の課題ですし、Joi-Tabをよりうまく活用してナレッジの共有を進めていきたいなと思っています。

※新型コロナウイルス感染症のリスクを考慮し、一定の距離を保ちながら、撮影時のみマスクを外して取材を行なっています


取材を振り返って

私たちの生活に身近なJR東日本。今回お話いただいたタブレット導入をはじめとして、駅の中はどんどん便利になっていると感じています。駅でわからないことがあったときは自分のスマートフォンで調べていましたが、現場の駅員さんたちがスムーズに情報共有をしているということで、今後困ったときはぜひ相談してみたいと思います! また、口頭で伝えにくい技術継承の手段に動画配信を活用するというのはとてもいいアイデアですね。カスタマー向けにも社内向けにもどんどん効率化していくJR東日本さんのお話を聞きながら、とても頼もしいなと感じました。(PRAZNA佐藤さやか)


取材・文:園田もなか
編集:水上歩美/ノオト
撮影:井上依子


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