「それぞれの違い」を理解すれば、議論もナレッジ共有も変わる。経営執行陣が“自己紹介”から始めた理由
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「それぞれの違い」を理解すれば、議論もナレッジ共有も変わる。経営執行陣が“自己紹介”から始めた理由

2021年6月29日にスタートを切った株式会社PRAZNA(プラズナ)。始動にあたって経営チームが行ったのは、互いを知り、それぞれの違いを理解するためにとことん話し合う「ブートキャンプ」でした。

あなたはどんな人ですか? これまでの人生で最も輝いていたと思う瞬間はどんなとき?

そんな質問を交えて語り合った時間は、よくある経営合宿とはまったく趣の異なる場だったといいます。なぜ経営執行チームはブートキャンプを行ったのか? 「それぞれの違いを理解する」ことの意味とは? 取り組みを主導したPRAZNA取締役の陣内裕輔に聞きました。

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(プロフィール)
陣内 裕輔(じんない・ゆうすけ)
株式会社PRAZNA 取締役。1988年、電気通信大学大学院修了、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。1994年 にマイクロソフト株式会社(現・日本マイクロソフト株式会社)へ移り、2007年 より業務執行役員Windows開発統括部統括部長として日本およびアジア地域のPC メーカーやエコシステムパートナー間での共同開発、ビジネス協業を推進する。2020年4月、CTOとして株式会社オウケイウェイヴ入社。2021年6月より現職。


モノのクオリティは、それをつくる組織のクオリティ以上にはならない


――陣内さんは長年にわたりマイクロソフトでキャリアを積んできました。当時の経験は、今回の「ブートキャンプ」にどのようにつながっているのでしょうか。

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私はマイクロソフトでWindowsの開発に携わっていました。Windowsの開発には、1万人以上の人が関わっていたこともありました。マイクロソフトのパートナーである世界中のハード・ソフトメーカーの方々も含めれば、膨大な数のエンジニアが開発に参画してきました。これだけの人が集まって一つのモノを作っていくのは至難の業です。エンジニアリングとは、多くの人々を組織化する力にかかっています。

実際に私たちは、Windowsを作る前にまずチーム作りを行っていました。プロダクトのクオリティは、それを生み出す組織のクオリティ以上にはなりません。組織のクオリティとはそこでやり取りされているコミュニケーションのクオリティです。ただ話し合うだけではなく、例えばラグビーとかサッカーのように、一つの目的を全員が理解して、あとは一人ひとりが常に周りを見ながら自分の判断と選択をして動く。それを様々な場面で実践していくことが大切だと思っています。

Windows開発では実に様々な経験をしました。その中でも失敗の経験からは多くを学びました。後から振り返れば、プロセスのどこかで「コミュニケーションがうまくいっていない」ことが要因としてありました。組織ごとに分断が起き、連携できなければ、良いものづくりができるはずはありません。

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大企業の場合は、最悪な状態として派閥争いのようなことも起きます。いろいろな組織が合併してできてきた組織にもありがちです。根っこに相互理解を図るためのコミュニケーションがなければ、何年も問題が放置されたままになってしまう。

私は、PRAZNAの船出にも同じようなリスクが潜んでいると考えていました。オウケイウェイヴ時代と仕事の内容は変わらないように見えるけれど、私たちは新たにPKSHA Technologyグループでのシナジーを生み出していくことにも挑戦しています。このタイミングだからこそ、経営チームのコミュニケーションのクオリティを確認しておくことが必要だと思いました。

――経営執行チームがコミュニケーションを深める場として、なぜ「経営合宿」ではなく「ブートキャンプ」としたのでしょうか。

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ブートキャンプは、もともとはアメリカ軍の新兵訓練を指す言葉です。ブートとは「コンピュータに電源を入れたときの最初のプログラムを実行する」という意味もあります。ここから、「新しいチームが組成されたときにチームとして機能させるために集まって話し合うこと」という思いも込められています。

私は、通常の会議の延長線上の合宿よりも、もっと突っ込んだことを話し合いたいと思っていました。コンピュータを起動するように、会社を立ち上げたタイミングなのだからこれはブートキャンプだろうと考えました。経営合宿は後からでも、何回でもできますが、ブートキャンプは基本的にチームに1回しかない、大切な機会でもあります。

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事業計画や数字ではなく、「自己紹介」から始まったブートキャンプ


――ブートキャンプ参加者の顔ぶれや、話し合った内容について教えてください。

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代表取締役社長の佐藤哲也と私、執行役員、ビジネスマネージャー、計6名が集まりました。

一般的に経営会議というと、事業計画や数字について話すことが多いのかもしれません。しかしブートキャンプではそうした話題は扱いませんでした。もっと基本的な、土台となる部分、つまり経営チーム内の人間同士の関係性やそこで起こるプロセスに気づくことを重視したかったからです。

ブートキャンプはまず「自己紹介」から始まりました。といっても強制的に話さなければならないテーマは何もなく、各々が話したいことを話します。内容は何でも構いません。これまで生きてきて印象に残っていること、仕事の中で思い出に残っていること、いいことも悪いことも、うれしかったことも嫌だったことも。

参加者には10年以上にわたって一緒に仕事をしてきた間柄の人もいます。でも、これまでにそんな話をしたことはありませんでした。

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――なぜそうした話題を大切にしたのですか?

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会社では日頃からたくさんの議論が交わされますが、いつも「何かについて」話していますよね。普段の私たちは、課題や問題をどう解いていくかということに集中しているわけです。

「何かについて」話し合っている私たち自身のことや、互いの関係性についてまで話が至ることはほとんどありません。そんな時間はないし、そんなことを話すことには意味を感じていないかもしれない。でも、「自分以外の人たちがどんな考え方や価値観を持っているか」「同じものを見たとして他の人たちはどんな感覚を持つのか」について意識することも大切だと思います。何か新しいことを始めようとするときは特に。

一人ひとりを尊重し、それぞれの見方や考え方の違いを認識する。よく言われるように、多様性や違いを尊重する、ということだけで終わるのでなく、違う考えを持つ相手に積極的にコンタクトしていく。違う考えを組み合わせ、一つの決断を選択していく。こういう習慣を広げていけば、一人では考えがおよばないことを思いつき、一人ではできないことも実行できるようになっていきます。ブートキャンプでは、経営執行チーム内にそうしたコミュニケーションが生まれることを目指していました。

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新しいモノを生み出すには他者との出会いが必要


――互いの違いを認識し、尊重し、そしてコンタクトしていく。今のPRAZNAにそれが必要だと考えたのはなぜですか?

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背景には、私が2020年にジョインしてからずっと感じていたことがあります。PRAZNAのみなさんは、とてもいい人たちばかり。互いにサポートし合い、周りに気を遣い、困っている人がいたら手を差し伸べる文化があると思います。 

ところが、こうした文化が浸透していることによる副作用もあります。それは「みんな同じはずだ」ということを暗黙の前提にすると、異質な考えや他者とのコンタクトをしなくなること。生命の進化の過程を見ても、異質なもの、異質な環境との出会いが次の飛躍につながることが多くあります。「私たちは一つの組織体だからみんな同じである」という認識で日々の仕事を進めていないでしょうか? 実は一人ひとり、まったく違う存在なのに。

そもそも、担当する仕事によっても立場は違いますよね。マーケティングと営業、企画と開発など、異なる部署が絡むときに、「それぞれは正しいことを主張するけど全体としては何かおかしい、答えが出ない」ということも往々にしてあります。

みんなが同じであることを前提にしてコンタクトの量も減っていき、いろいろな物事を決められない、アクションを起こせない。私たちの組織にはそんな弱点もあるのではないかと思います。私たちに限らず、人間が集まる組織なら往々にして起きることなのかもしれません。

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――組織作りにおいてはよく「理念の共有や浸透」が重要だと言われます。これも、同じ理念に向き合えていることに満足しているだけではいけない、ということでしょうか。

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そう思います。私は、理念やビジョン、ミッション、バリュー、パーパス…といったものは「コミュニケーションのための道具に過ぎない」と考えています。

言葉としての理念は一つでも、その捉え方や感覚は人それぞれですよね。そこに違いがあるのは当然です。その感覚、もっと言うと「感触」をやり取りする行為こそが、共有であり浸透だと思います。たとえば「挑戦」ということを理念に持つ組織があるとします。これ自体はただの言葉であり、「挑戦と聞いて一人ひとりがどのように感じるか」を計る道具です。その感覚をキャッチボールすることによって、相手がどんな世界を見ているのかお互いに確かめ合うことが大事です。

ふんわりと「みんなが理念に共感している」「私たちは一つだ」と思っているのは、一人ひとりの違いの感覚が麻痺してしまっている状態なのかもしれません。


違いを意識することは、組織内での情報発信や検索にもつながる


――「みんな同じ」という前提から脱するために、ブートキャンプではまず互いの違いを知ることから始めたということですね。

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はい。一人ひとりの感覚が違うという前提に立てれば、議論のあり方は変わるはずです。「感じ方が違えば、意見が対立するのは当たり前」というところを出発点にしたいんです。さらに、「違いを感じること」を新しいモノや価値を生み出すエネルギー源としてとらえたいのです。

加えて、こうした考え方は、PRAZNAが提供する「組織のナレッジマネジメント」という事業領域においても非常に大切だと考えています。

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――詳しく教えてください。

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ある人が、特定の仕事における知識や経験を持っているとします。でもその人は「こんなあたりまえのことをみんなに知らせても意味がないんじゃないかな」とか、「自分の知っていることなんて大したことないよな」なんて考えてしまっているとします。

一方で別のチームには、その人の知識や経験を必要としている人がいるかもしれません。「こんな情報があれば自分が困っていることはすぐ解決するのに……」「でもうちの会社にはこんな情報あるはずないよなぁ……」なんて思いながら。

互いがこの状態だと、組織内では何一つ知識や経験が共有されていきません。ナレッジマネジメントを進めるには、「情報を発信しよう」「情報を検索しよう」という動きを起こしていく必要があります。このときにも「一人ひとりが違う」という前提に立つことが大切です。

――「自分とあの人は違うから、この情報が役に立つかもしれない」と考えることが大切なのですね。

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はい。営業である自分には当たり前でも、マーケティングのあの人は知らないかもしれません。逆に、営業部内に知識がなくても、マーケティング部内にはあるかもしれません。そうやって違いを意識していくことがナレッジマネジメントの第一歩です。

今後はチームやプロジェクト単位でのブートキャンプを推奨したい


――陣内さんは、ブートキャンプを経て経営チーム内にどのような変化が生まれたと感じていますか? また、今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

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印象的なのは「たしかにそんな考えもあるよね」という言葉がよく聞かれるようになったことです。ブートキャンプの間、個人的な思いを語り合い、理解し合う経験をしたことで、経営執行チーム内のコミュニケーションは大きく変わりました。

情報共有や議論では、良いことも悪いことも含めて、相手の立場を意識しながら話せるようになっていると感じます。意見の違いがあれば、場合によっては立ち止まって、じっくり落とし所を考える勇気も持てるようになりました。

今後は、こうした変化を経営執行チームだけでなく、PRAZNA全社に広げていきたいと考えています。チームやプロジェクト単位でのブートキャンプも推奨していくつもりです。

一人ひとりが違う人間であることを理解し、互いを尊重して、意見の対立を恐れずに前に進んでいく。そんなPRAZNAであり続けたいですね。



※取材は換気を行いながら、十分な距離を保った上で行なっています。
※ブートキャンプは、事前に体温計測をしてマスク着用のうえソーシャルディスタンスを保ちながらで実施しています。

取材・文:多田慎介
編集:PRAZNAマガジン編集部
撮影:尾木司

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